新天地

 FEYEで点訳活動が活発になってきたので、フォーラムを分割する事になりました。眼に関する諸々を扱うフォーラム「FEYETOOL」と点訳を扱う「FEYEBASE」が誕生したのです。

 点字は全く知らないと言う人たちを受け入れる会議室の名前が「ひよこ組」でした。ひよこ組で使っていたテキストが、群ようこの『肉体百科』で、基礎講座はこのテキストを使っています。
 FEYEBASEの方は、一応経験者の為のフォーラムと言う事で、ひよこ組はFEYETOOLの中に会議室が作られました。

 和気藹々とした活動が続いていたひよこ組ですが、困った事が起きました。FEYEBASEのシスオペが病気で活動を続ける事が困難と言う事で、FEYEBASEの方は閉鎖される事になったのです。

 さあ困りました。ひよこ組を卒業した人は、FEYEBASEに移動していたのですが、行き場が無くなってしまいました。FEYEBASEで活動していた人もこれからどこで前のような活動をしていけばいいのでしょう?
 FEYETOOLは無くならないので、FEYETOOLの方に点訳会議室を設けて欲しいとお願いしたのですが、無視されてしまいました。

 どうしましょう? 今のようにSNSなんて有りませんでした。路頭に迷って意気消沈している私たちを見かねて助け船を出してくれた方がいました。

 当時ニフティには、フォーラムの他に、フォーラムから1会議室だけ取りだした形の「パティオ」と言う会員同士がコミュニケーションを取る場が提供されていました。その当時、パティオの使用料は、月7000円だったと記憶しています。後に値下げして500円になりました。

 その7000円のパティオを、生駒さん(ハンドルネーム)が提供してくださったのです。生駒さんは、有名な点字エディタ、BASEの版権所有者です。BASEを起動すると「Copyright(C) 1990,96 無量寺点字出版所」と表示されます。その下には、「Programed by S.Yoshida on Turbo-C 2,0」と表示。生駒さんは、無量寺の住職です。BASEの作者は、ハンドル名okiyoさんでしたが、BASEの起動画面から、本名は吉田さんのようです。

 もう一人匿名の方がパティオを提供してくださいました。その方は吉田さんと言うお名前だと漏れ聞きました。

 つまり、月14000円ものお金を提供していただいたおかげで私たちの活動は続ける事ができました。逆に言うと、お二人のご厚意が無ければ、今の私たちの活動も無かったでしょう。

 パティオは部屋が一つしかありません。生駒さん提供のパティオはメッセージのやり取りとして使用しました。いろいろなグループが同居する為に、ヘッダーと言う、グループを識別する記号をタイトルの始めに付ける事にしました。
 吉田さん提供のパティオは、データのやり取り専用に使う事にしました。

 パティオはメッセージしか書けません。もちろん添付などもできません。そこで、BSEファイルの拡張子「.BSE」を「.TXT」にリネームして、BSEファイルを単なるテキストファイルとしてメッセージとしてアップし、ダウンロードしたら、ファイル名を「***.BSE」にする事で、データのやり取りを可能にできると考えました。しかし、ここで問題が発生。

 専門的な話になってしまいますが、BSEデータは、最初に連続した512バイトの文字列(ほとんどは空白)が有るのです。これを「ヘッダー」と言って、ここが1文字でも多かったり少なかったり、途中で改行が入っていたりすると「ヘッダー異常」と言うメッセージが出て読めなくなってしまいます。

 パティオは1行文字列の長さに制限が有って、512バイトの連続文字列は途中で改行が入ってしまうのです。ですから、上記のようにしてアップしたBSEデータも「ヘッダー異常」で読めないのです。

 さあ、困ってしまいました。BSEデータがやりとりできなければ、私たちの活動はできません。しかし、FEYEに集結していた点訳者の中には、コンピュータ関連にめっぽう強い人たちも何名かいて、「ISHを使えばいい」と提案してくれたのです。これは「ISH.com」と言うフリーソフトのことです。

 ISH.com と言うのは、パソコン通信時代、つまり文字しかやり取りできない時代に流行ったソフトで、プログラムや画像など、文字以外のデータをテキスト文字列に変換・復元を行えるソフトです。

 BSEファイルをISH.comにかけて、訳のわからないテキスト文字列にし(エンコード)、それをパティオにアップ。ダウンロードしたISHデータをISH.com にかけてBSEファイルに戻す(デコード)と言う、ちょっと面倒な方法でしたが、無事、BSEデータのやり取りができるようになりました。これのおかげで、現在のBASINGROOMは存在していると言っていいぐらい大切なソフトでした。

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