放浪の旅

 行き場が無くてやむなく引っ越したパティオでしたが、実際にそこで活動してみると意外に快適でした。
 FEYEがお城の中の豪華な会議室とすると、パティオは奥深い山間にひっそりと佇む山小屋と言う風情でした。外敵に襲われる心配も無く、うるさい城主もいません。和気藹々と点訳活動にいそしむ事ができたのです。

 FEYE時代は、新人さんが毎日のように訪れるので、ひよこ組のように、大勢まとめて面倒を見る必要が有りましたが、パティオはほとんど人の目に触れる事がないので、本当にたまにしか新人さんが来ません。そこで、ひよこ組に替わるものとして「基礎講座」を開設しました。

 ひよこ組が幼稚園とすると、基礎講座はマンツーマンの家庭教師と言うところですね。ひよこ組はやさしい先生ばかりでしたが、基礎講座ではちょっと厳しくしました。一番うるさく言ったのが「原文を変更しない」です。

 もも缶プロジェクト以来、私たちは「自分の好きな本を自分のペースで気楽に」と言うコンセプトで点訳してきました。分かち書きは経験を積めば自然に上達して来るので、最初は気にしなくて結構。締め切りも一応決めては有るけど、無理はしない、と言う感じです。

 しかし、原文と違った事を書く事については厳しくしました。原文と違った事を書いてしまったら、著作を改編してしまう事になります。著者からすると、自分の書いたものが変更されてしまうのは耐えられない事でしょう。

 校正はナビールさんにお願いしていましたが、もう一人校正してくださる方が参加されました。竹村寿一さんです。竹村さんは、音声装置で点字データを読んでおられ、文章におかしな所が有るとメールで知らせてくれました。

 快適なパティオにすっかり馴染んでしまうと、FEYEの事は頭から消えていました。その頃にはニフティサーブも「アット・ニフティ」と改名していました。

 パティオには10年間滞在しましたが、その間、インターネットが急速に普及していました。パソコンもDOS/V機になり、それまでのBASEは使えなくなってしまいました。DOS/V用のBASEVも開発されましたが、Windowsの普及が目覚ましく、点訳エディタもWindows用の「ういんびー」や「Tエディタ」を使う人が多くなってきました。点訳以外にも新しいテクノロジーの情報交換の場としてパティオは活躍したのです。

 FEYEの事はすっかり忘れていたのですが、世はインターネットの時代、パソコン通信はすっかり時代遅れとなっていました。そして2005年2月、ついにアット・ニフティはパティオサービスの終了を宣したのです。

 安穏と暮らしていた私たちにとって、青天の霹靂でしたが、青天の霹靂はその後次々と襲って来る事になるのです。BASING ROOMの歴史は、青天の霹靂の歴史なのです(^^;

 パティオの終了は、5月31日。しかし、私たちはすぐに引っ越し作業を開始しました。パソコン通信との決別でした。10年もの間、パティオ存続のために費用を支出していただいた、生駒さんと吉田さんには大変感謝しています。

 2月12日には、以下のようなメッセージを書いています。

  引っ越し準備です。
パティオ閉鎖後の引っ越し先を探していましたが、PARAGONさんが良い所を見つけてくださいました。
 インフォシークのクラブです。パティオは一部屋ですが、インフォシークのクラブは、人数や書き込みが多いと、たくさんの部屋が持てます。パティオには無かったデータライブラリも有りますし、アップは、圧縮しなくても、いきなりBSEデータで登録できます。今まで、新規加入の方は、ISH化で苦労されていましたが、そういう苦労も不要になります。

 「災い転じて福となす」と言います。FEYEBASEが閉鎖になった時は、どうなる事かと思いましたが、パティオでの活動は、FEYEBASEの時よりずっと快適だったのです。

 インフォシークに引っ越した時も、前よりずっと快適だとすぐに気づきました。データライブラリも有りますし、アップもISH化の必要が有りません。書き込みが増えると部屋数も増える仕組みで、あっという間に部屋数が増えました。一部屋の時のようにタイトルにヘッダーを付ける必要も無くなったのですが、ヘッダーが有った方が何かと便利と言う事で、これはBASING ROOMの伝統となりました。

 翌年3月には、アット・ニフティも終了。パソコン通信と言う言葉は過去のものになってしまいました。

 しかし、何かをテーマとしてコミュニケーションを取る場であるSNSも流行らなくなっていました。他のクラブを尋ねても、ほとんど書き込みが無い状態でした。広告収入で運営しているSNSにとって、参加者がほとんどいない状態では運営がなりたちません。インフォシークも1年後にはサービス終了になってしまいました。

 この後、引っ越し・閉鎖の繰り返しが続く事になります。

 2006年9月~ エキサイト
 2007年6月~ MSNコミュニティ
 2009年1月~ カフェスタ
 2009年5月~ nanoty
 2010年8月~ グループチューブ

 エキサイトはインフォシークとほぼ同様の使い心地で、心配された引っ越しの際の混乱も有りませんでした。
しかし、1年保ちませんでした。

 MSNコミュニティになると会議室やデータ容量に不自由しなくなり、発言にデータが添付できるなど、使い勝手も良くなりました。ここには1年半滞在しましたが、またまたサービス終了の案内。

 次のカフェスタは、カラフルで遊び心満点の明るいサービスで、面白いアバターが多数用意されていました。
アバターを取っ替え引っ替えして楽しんでいた人も多かったようです。
 しかし、カフェスタも滞在期間わずか4ヶ月でサービス終了の案内。nanotyに移動する事になります。

 nanotyでは画像の添付できる日記を書く事ができ、楽しい画像が多くアップされました。しかし、ここも1年2ヶ月でサービス終了の案内。グループチューブへ引っ越す事になりました。

 慣れた頃にサービス終了の案内(青天の霹靂)が有り、その都度、PARAGONさんが新しいSNSを見つけてくださいました。引っ越しは大変でしたが、引っ越す度に部屋数や機能が増え、パティオの時代からは比較にならないほど充実した環境が手に入りました。

 グループチューブは、初めての有料サービスで、広告が無く、非常にすっきりした画面になっています。しかも、カスタマイズ可能なので、スタッフで相談し、より使いやすい画面にすることができました。
 それまでのSNSは、レスポンスが悪かったり、時々サービスが停止したり、何かとストレスを感じる時が有ったのですが、グループチューブは全くストレスを感じません。
 できることなら、ここが終の住処となればと願っています。「サービス終了のお知らせ」はもうご免ですね。

                          2010年8月   悟空

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